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春の木幼稚園の展覧会

 沼津市東椎路に【春の木幼稚園】というなんともかわいらしい名前のこども園があります。ここは静岡茶の生産が盛んな地域。園舎の窓を開けると、目の前にはあざやかな緑色の茶畑が広がっています。

 この幼稚園には、焼き物小屋や創作活動をするアトリエがあります。初代の園長先生は画家でもあったので、園でもよく絵を描いていたといいます。そんな園長先生の様子を身近で見ていたからか、園の子供たちは代々絵を描いたり作品をつくることに積極的な子が多いそうです。

 幼稚園が開園してから44年。その間に、社会の風潮や保育の現場に求められる役割、人々のライフスタイルも大きく変わりました。園のあり方を時代に沿わせるという選択をし、春の木幼稚園も来年度から《幼保連携型認定こども園》に移行します。

 それに伴って、みんなに親しまれた園舎の一部を壊して新しい園舎を建てる計画なのですが、今月で役目を終える園舎からはこれまでに、2000人以上の子供たちが巣立っていきました。

 今回お別れをすることになる園舎に先日、在園児たちが色をつけました。絵を描く、というより優しく撫でたりさすったりしているようにも見えるタッチには理由があります。 

 春の木幼稚園の園舎解体にあたっては、沼津の芸術グループEN(えん)と地元のアーティストが、芸術士として現場に入りました。幼児保育の現場にアーティストを派遣する試みの一環です。役目を終えてなくなる園舎のことを、《取り壊す》と言っても園児にはまだわかりづらいので、芸術士から、《おじいちゃん園舎とのお別れだよ》と説明したそうです。

 いままでがんばってくれたおじいちゃん園舎に

 薬を塗るようにやさしく

 すてきな色で手あてをしてあげようね。

 その説明は、こどもたちの心の中にすとんと落ちたのかもしれません。

 筆などの道具を使わなかったので、園舎じゅうに小さな手型や足型がたくさんできました。スイッチや電話機にも、入念に絵の具が塗られています。たくさんさすってかすれた色が、壁にも床にもガラス窓にもあります。保育士も芸術士も一緒に色を塗りました。刺激しあいながら。喜び合いながら。目指す完成形などは必要なかったのでしょう。ただ優しさが、そこここに満ちていました。

 子供たちの描きたての絵は、まだ絵の具の匂いがしてところどころ完璧には乾いていない部分もあるほどでした。そんな令和の現代っ子である彼らの空間を抜け、廊下を通って体育館へ入ると、昭和、平成の時代の子供達の作品がそこにありました。

 何を描くのか、どうやって描くのか、誰がどのパートを描くのかも、担当教員のサポートのもと全て子どもたちが主導したというのにも驚きました。油絵独特の色味や、塗り重ねられた質感、デコボコとしたかんじ。色彩。

 この園で時を過ごしたという共通点をもつ、異なる時代に生きる子供たちの熱量が、時空を越えて共存している。その壮大な喜びを、絵のいろどりが讃えているようでもありました。そのどれもが、等しく、美しいのです。

 お時間があればみなさまも是非お運びください。卒園生でなくても必見です。

春の木幼稚園(はるのきようちえん)

住所 静岡県沼津市東椎路15471番地

展覧会 令和2年7月4日〜10日 10時〜15時 

会場 春の木幼稚園 体育館と解体する園舎

駐車スペースが限られています。

また平日は通常保育を行っていますので、

運転にはくれぐれもお気をつけください。

 

 【大型油絵を飾っていただけませんか?】 
 昭和61年度から平成16年度までの28年間に描かれた
 春の木幼稚園の作品群を、こうして一気に見られるのは
 今回が最初で最後の機会になります。
 毎年3枚~4枚をその年の年長さんが描き、専門家が額装をし、
 園で大切に保管してきましたが、
 今回の園舎取り壊しでこれ以上保管するのは
 難しくなってしまったそうです。
 春の木幼稚園ではこれらの絵を引き取り、
 飾ってくださる方を探しています。
 
  医療施設や介護施設がいいかなあということでしたが、
  それ以外の場所でも相談が可能だそうです。
 
 条件は、
 作品を展示してくれること
 搬出搬入を御自身で手配できること
  
 幅が約2.8m×高さが1.5m。
 ほとんどが横描きで、全部で70枚あります。
 1枚でも多く次のステージが見つかりますように。

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