今回お別れをすることになる園舎に先日、在園児たちが色をつけました。絵を描く、というより優しく撫でたりさすったりしているようにも見えるタッチには理由があります。
春の木幼稚園の園舎解体にあたっては、沼津の芸術グループEN(えん)と地元のアーティストが、芸術士として現場に入りました。幼児保育の現場にアーティストを派遣する試みの一環です。役目を終えてなくなる園舎のことを、《取り壊す》と言っても園児にはまだわかりづらいので、芸術士から、《おじいちゃん園舎とのお別れだよ》と説明したそうです。
いままでがんばってくれたおじいちゃん園舎に
薬を塗るようにやさしく
すてきな色で手あてをしてあげようね。
その説明は、こどもたちの心の中にすとんと落ちたのかもしれません。
筆などの道具を使わなかったので、園舎じゅうに小さな手型や足型がたくさんできました。スイッチや電話機にも、入念に絵の具が塗られています。たくさんさすってかすれた色が、壁にも床にもガラス窓にもあります。保育士も芸術士も一緒に色を塗りました。刺激しあいながら。喜び合いながら。目指す完成形などは必要なかったのでしょう。ただ優しさが、そこここに満ちていました。