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当たる男。

 次男チロは小さい頃からくじ運が良くて、と言っても駄菓子屋の10円ガムかきなこ棒とかそういう小さいもの。3人兄妹で誰かが当たるっていうと、だいたいチロ。きなこ棒のあたりの先っぽが赤いのを大喜びで交換してもらって、もう一本もらったら、またあたり、みたいな。おみくじを引けば大吉か中吉。本能のままに力づよく描いた絵は、2年連続絵画展で入選。そういう人。

 実力外の強運が、彼の足りない部分を補足してくれている感じ。不思議な親しみやすさで人の懐に入って、一瞬で人と仲良くなる場面を何度も見てきた。ただし突拍子もないことやしょうもないことをその倍以上するから、荒っぽいとか雑って印象を持たれることも多いけどね。

 

 

 「東京オリンピック2020の聖火リレーのサポートランナーを市内の小学生から募集」というプリントを小学生の兄弟が持ち帰ってきた時も、

「各小学校で1名のみ」って書いてあるのを見て、もしかしたらチロが当たるかも知れないなってどこかで思った。1年から6年まで、大体4クラスの希望者から、たったひとり。

 そして兄弟2名分を申し込んで数週間後。市役所のウィズスポーツ課の担当の方から電話で連絡をいただき、「おめでとうございます、1年生のチロさんに決まりました」となった。公平性を保つため、教育委員会の方が名前を見ずにランダムに紙を引いたそう。

 数日後、上下新品のユニフォームも届いて、前日には友人が応援に来てくれたりして、ワクワクと当日を迎えた。

 当日は聖火リレーのルートになる道が通行止めになる前の17時台に、早々セレブレーション会場に入って、各スポンサーのブースを回って写真を撮って、連絡先を聞かれたりLINEの「ともだち」に登録させられたり、お土産のタオルや扇子やクッションをもらったりしていたら、飛龍太鼓とかチアのダンスが始まって、あっという間に19時半頃になって、聖火が会場に到着した。

 沼津のラストランナーの岩崎恭子さんの後ろを、チロやそのほかのサポートランナーの小学生たちがパタパタと走ってついてきた。特徴的なぱっつん前髪と、なぜか一人だけマスクをつけっぱなし(他の子は走る時に外してね、って言われて外していた)のおかげで見分けがつけやすかった。ニコニコと手を振って。

当日会場内に入れたのは、招待客、報道関係者、事前に申し込んで当選した人、出場者の関係者だけだったので、人生で数回しかやったことのない「インスタライブ」をやってみた。そしたらちろの勇姿を撮り忘れて、インスタのスクショからこれしか撮れなかった。

 とにもかくにも、貴重な機会に感謝。

 舞台の上でなにか、(脱ぐとか白目とか逆走とか、やっぱり脱ぐとか)やらかすんじゃないかっていう周りの大人の期待を裏切って、張り付いたような作り笑いをしたまま写真撮影に応じていた。そんなチロの成長も見られて、母さんとしては終わって大いにほっとしたのでした。

おわり。

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