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ある夜のこと。

先週の金曜日、チロ(4)の幼稚園で納涼祭があって、アニ(7)とミッチ(2)と私の4人で一緒に行ってきた。この園の卒園生であるアニは、同じく弟妹の付き添いで来ている同級生たちと久しぶりに会えて嬉しそうにしていた。

17:00 小雨が降る中での開催だったので、予定より早く1時間程で会は終わった。最後の《パプリカ》は在園生だけでなく、アニやアニの友達も歌いながら思いっきり踊っていた。

18:00 父さんが車で迎えに来てくれて、アニとチロを連れて近くの焼き鳥屋さんに寄ってくると言った。私はミッチとお風呂に入り、食事を済ませた。

19:00 兄弟が楽しみにしている週に一度の《ドラえもん》が始まったあたりで、男子たちが帰ってきた。「あー、間に合ったー」とかそんなことを言っていた気がする。焼き鳥屋さんで何をどのくらい食べたとか、チロは盆踊りを恥ずかしそうにおどってたよ、とかそんなたわいもない話をしながら、それとはなしにソファに座っているアニに目をやったら、スローモーションのように突然アニの顔がゆがんだ。

ソファに不自然に沈み、目をぎっと見開いているけれど何も見ていないのがわかった。唇がみるみる紫になってすぐに青くなった。よだれが垂れ、手足はピンと伸びたままだった。名前を呼んでも呼んでも全く反応をしない。チロとミッチは泣き出して、父さんはアニの胸元を叩いて大きな声で名前を呼んでいた。

こわいこわいこわいこわい

彼が生まれてからこれまでのことが一気に襲ってきて、心が折れそうになったけれど、スマホを手に取って119番をダイヤルした。

 

19:20 電話で状況を説明しているつもりだったけれど、電話口の人に何度も「落ち着いて」と言われた。今思い返しても、何をどの順番に話したかまったく覚えていない。「助けてください」と「おねがいします」を繰り返していた。

しばらくして遠くからサイレンが近づいてくる音が聞こえて、2階のリビングルームに2人の救急隊員が入ってきた。そこからはあまり覚えていないのだけれど、アニがどうやってか救急車に乗せられて、私もお財布と保険証セットをバッグに放り込むように入れて、乗り込んだ。

救急車の車内では、いろんなコードがアニにつながれて、モニターにたくさんの数字が表示されていて、ビープ音が聞こえた。その頃にはアニの唇の色はピンク色に戻っていたけれど、相変わらず意識はなかった。サイレンを鳴らして雨の街を救急車が進むと、それに合わせて車道を走る車がゆっくり減速して、テールライトが左右にフワーッとよけてくれるのが、なんとも言えずありがたかった。動揺している中ではあったけれど、オウムの群れのようできれいだなとぼんやりとおもった。

19:50 病院について程なくしてアニの意識は戻ったけれど、気を失った時のことも救急車に乗っていたことも覚えていないようだった。血液検査をしてCTを撮って、点滴を打ってもらった。結局それらしい原因は見つからなくて、22時半頃自宅に戻ってきた。靴を履いていなかったアニは、210円で使い捨てのスリッパを買った。

 

原因はなんだったのか、医療のプロがわからなかったことを考えても仕方ないのかもしれないけれど、この週末の間父さんと何度も反芻した。

早起きしすぎた?疲れが溜まっていた?

食事の塩分が多かった?テレビのフラッシュ効果?

ストレス?遺伝?なに?なに。

今回の件でわたしは、《痙攣》という漢字を書けるようになった。念のためしばらく検査のための通院は続くのだけれど、あの日以来わたしはワインが飲めなくなってしまった。父さんが一晩に何度も寝ているアニの呼吸を確認しているのも知っている。テレビは怖いから、リビングでラジオを流すようになった。

こうなってしまうと親は臆病でとても無力。だめだとわかっていても思いつく症状を検索して不安になってしまう。でも彼自身は、今はすっかりケロっとしていて《安静》になんて全然していられない人だから、今日も虫捕りをして自転車に乗って、チロとミッチと大騒ぎしていたので、皆さまどうぞご心配なく。

(自分たちへの備忘録として記します。)

 

 

2件のコメントがあります

  1. ともこ

    私も子供の頃、時々こういう症状になりました。
    その時は原因がわからなくって、大人になってから実はアレルギーだったとわかりました。
    親は慌てふためき、あの時は生きた心地がしなかったと、聞かされました。
    一度、詳しいアレルギーの検査をしてみてもいいかもしれません。
    食べ合わせによって、急に反応が起きることもあります。
    アニさんが無事で何よりですが、しばらくは心配ですよね(;_;)

    1. hiromi

      ともこさんありがとうございます。今はMRIや脳波の検査をしているのですが、食べ合わせということもあるんですね。それは思いつきませんでした。とにかく原因がわからないと、ロシアンルーレットのようでこわいのです。

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