診断は《この程度じゃまだ更年期じゃないよ》だった。眠れているし食べれている。体も熱くないし、笑えている。それでも毎日イライラするのはしんどいだろうからと、心穏やかにいられるように効き目の優しい漢方を処方してくれた。
かあさんになってから8年。我が家からオムツやスタイやバンボや、そういった乳児周りのものがひとつづつ静かに消えていく。小説を2日で読み切る時間の余裕ができてきて、夜中に起こされることも少なくなってきた。
友達に赤ちゃんが生まれたと聞けば、「抱っこさせて」と自然に言っている。誰かが妊娠したと聞けば、いまでも心が少し波立つ。羨ましいとも違う。ただ、もう私には起こらないことだなと静かに確認する。
こうして、我が家に赤ちゃんがいる時期はいつの間にか過ぎて、子供達は刻一刻、大人へと進化している。イライラなんてしていたらもったいない。そうわかっているのに、どうしても上手くいかない私の未熟さよ。この環境にあぐらをかかずに、ほんとうは感謝と笑顔で過ごしたい。私の見せる《大人の女性像》は、そのまま小さなレディであるミッチのロールモデルにもなりうるのだから。
家事が一息ついたときの1杯(くらい)のワインを楽しみに、今日も家事の波間をがしがし進む。